第十話

 


久遠 天馬先生。

数学担当。

25歳独身、彼女有。

明るい性格で誰からも好かれるような人。

生徒のこととなると親身になってくれる、俺たちから見て最高の先生。

俺も、先生が大好きだった…。

 


目が、おかしくなったのか?

なにか変な物が見える……。

テ・ン。

何度見てもそう書かれている。

なぜ?


ふと先生と目が合った。

どうしたんだ?

という笑顔で俺を見てくる。


「おいおい名月。そんなに見つめられたら先生恥ずかしいだろ〜」


「いやいや、見つめてないし」


「俺が教室に入ってからずっとこっち見てるじゃないか。もしかしたら名月、俺のこと……って思ってたんだぞ」


「ありえないでしょ。変な噂使って俺をいじらないでくださいよ、先生」


「あはは〜、ばれたか。まぁ本当だとしても俺か〜わいい彼女いるしな〜」


不意に隣の席の女子が立ち上がって先生に聞いた。


「え、先生。彼女いなかったらOKだったんですか!?」


「ん〜。考えては見るかもね、相手が名月だったら〜」


キャー キャーと、クラスの女子達が騒ぎ出す。

なぜ女はこういう話が好きなのだろう…。

男×男とか気持ち悪いだろう…。


「まぁそれは冗談としてだ…。1時間目はこの俺の授業なのだが、準備できてるのか諸君。準備できてなくても始めち

ゃうぞ〜」


「え〜、先生もう少し雑談しましょうよ〜」


「だ〜め。俺が校長に怒られちゃうじゃん」


ブーイングの嵐。

その中で黙々と勉強道具を取り出す自分。

ふと柊平の席を見ると、そこは空っぽだった。


そして、いつもの日常が始まった。

 

 



昼休み。

いつもの友人達で昼食をとっていると、突然クラスメイトに呼ばれた。

どうやら、下級生が俺に用事があるらしい。

適当に片づけて廊下に出ると、おとなしい感じの女の子がそこに立っていた。


「俺に用事があるって、君?」


「あ、はい…」


「それで、用事ってなに?」


「あの、えっと……これ、読んでください!!」


そう言って顔を真っ赤にしながら俺に突き出したのは、手紙のようだった。

とりあえず受け取ると、顔を真っ赤にしたままでそのまま走って去っていった。

なんだ?と封を開けてみる。

……ラブレターのようだった。

一週間後に返事を聞きに来る、か。

今すぐに言ってあげたのに…。


「ひゅ〜ひゅ〜、和君罪な男だね〜。モッテモテだねぇ〜。羨ましいねぇ…」


「ばーか。好きでもない子から告白されても嬉しくないだろ」


「ということは、好きな子いるんだ?」


「いや、いない」


「……和、恋愛っていいぞ?」


「恋愛語らなくていいぞ?15回も惚れた女に告白して撃沈した男に語られても困るだけだから」


「うわっ、ひどっ。この俺の心をずたずたに引き裂きやがって!お前なんかこうしてやるっ」


そう言って友人の一人が俺にコブラツイストを決める。

本気で絞めてないから痛くはない。


「いてて、悪かったって笹野〜」


「けっ、どうせ俺はふられ名人笹野様だっ」


「誰もそこまで言ってないだろ」


二人でふざけあっていると、突然メールが届いた。


「わり、ちょっと席はずすわ」


そう言ってその場を立ち去る。

背後から不満そうな声が聞こえるが、聞こえないふり…。



この辺でいいだろうか。

そっと携帯を取り出して、メールを開く。

 


「さあ、殺戮ゲームが始まります。君のすぐそこに、敵は潜んでいます。油断をしていると命を奪われてしまいます。君
の後ろには、君の死を待ちかまえている死神がいることを忘れてはいけません。誰も、信じてはならない。参加者諸君。健闘をお祈りしています。    十人の管理者より」

 

 

そしてまた、『デス・ゲーム』が始まる……。

 

 

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