第十二話

 



俺は、無意識に気付いていたのかもしれない。

あの夢をみた時、俺はすでに分かっていたのかもしれない。

先生=テン と言う事に。

 

 

 

 

先生が自分の正体を明かした後、俺と先生は屋上に向かった。

いつもは閉鎖されているため、生徒だけでなく教師すら近づかない。

煙草を吸いにやってくる奴らも、今日は誰もいない。

教室から屋上に向かう途中、俺たちは一言も言葉を交わさなかった。

この後起きる事が予想できていたから。

『殺戮ゲームが始まる』、『死を待ちかまえている死神がいる』

メールに書かれていたこの二つ。

そして、現実世界にもかかわらず、見えているCN。

これから、現実世界での殺人ゲームが始まるんだ。

しかも、ゲームオーバーになっても『リトライ』など出来ない。

自分の『命』を賭けたゲームなんだ。

でも、何故あの先生が殺人を拒否しないんだ。

何故俺は、逃げもしないで大人しく先生について行っている……。

理由は簡単。

『ワ ク ワ ク し て い る か ら』

これから人を殺すのに、なんだかワクワクしている。

それはとても小さい物だけど、俺の足を動かす糧にはなっているらしい。

そうする何かが、あのゲームに組み込まれていたのだろうか。

…俺は一度しかプレイした事がないから症状は軽いが、何度かプレイして居るであろう先生には、心を支配できるほど

大きい物になってしまったようだ。

だって、目の色が変わってる。

いつもの人なつっこい瞳ではなく、獲物を狩る飢えた肉食獣のような瞳をしている。

…ターゲットは俺か。

「着いたぞ」

短くそう言うと、先生は扉を開いた。

オレンジ色の光がまぶしくて、おもわず眼を瞑る。

平気だったのか、先生は怯む事もなく歩き出す。

俺は立ち止まって光を遮りながらそれを見る。

先生と俺の距離が広がっていく。

振り返った先生はにやりと笑って言った。

「さぁ、ゲームを始めようか。名月」

 

 

 

 

望まないゲームが今、始まる―――――。

 

 

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