第十三話

 

先生は突然右手を左手にたたきつけた。

すると、テンの武器『木鉄長棍』が音を立てて現れた。

「何している。お前も早く出せよ、小烏を」

驚いた。

CNが表示されるくらいだから、まさかとは思っていたが…。

とりあえず、今は驚いている場合ではない。

俺も真似て武器『小烏』を出す。

「よし、ゲームスタートと行こうか」

俺と先生は同時に踏み込み、互いに近づいた。

横に大きく振った先生の足を狙った攻撃を、上に跳んでかわす。

そのまま先生に刀を振り下ろすと、ガキィン!と言う音がした。

木鉄長棍で刀を受けられたのだ。

力で押そうとす?るが、全く動かない。

「なんで…何でこんな事になったんだよ」

「…彼女に誘われてやり始めたV・F・G。やる度に止められなくなっていた。気付いたらランキングにも入ってて…。そ

れからだ。たくさんのやつが俺に勝負を挑んできて、それを倒す。でも、少しずつ嫌になったというか…新しい風が欲し

くなった。初心者を育ててやるのも面白いかもしれない。そう思った。今時居ないよなって諦めてたら、お前が来た。

あんな事になるなんて思わなかったんだがな…」

「先生…」

「もうダメなんだ…。誰にも変えられない」

辛そうな顔をした先生は何気なくグラウンドを見た。

そしてある一点を見て、驚いた顔をした。

何だろう、と俺も見ようとした途端、先生が再び俺に襲いかかってきた。

「油断大敵だぞ、名月」

口元を歪ませて笑う先生は、いつもの先生とまるで別人だった。

「俺は、先生とは戦いたくない!」

「それは無理だ。この戦いは誰にも止められない。例えそれが知っているやつでも、大切な人でも、俺たちは殺し合わ

なけりゃならないんだ」

なんでそんな辛そうに言うんだ。

ギリギリで攻撃をかわした俺は、心の中で呟いた。

その時、誰かの叫び声が聞こえた。

「…あっちの勝負がついたみたいだな」

「え?」

悲しそうな顔をした先生は小さく言った。

 

 

吹き抜けた風に、微かに血の臭いが混じっていた―――――。

 

 

 

前へ         次へ