第十七話

 

 

 

 

 

何でこんな子供まで…。

そう思いながらも、俺は小烏を出す。

小烏を見て、凪が少し驚いた顔をする。

「へぇ、お兄ちゃん小烏の使い手だったんだ…」

「別に俺は強いわけじゃない。最初から俺の武器がこいつだっただけだ」

「ふーん…。まぁいいや。そろそろ始めようよ、お兄ちゃん」

そう言って、歪んだ笑みを凪は見せた。

「なんで…」

「ん?」

「何でお前は戦うんだ。自分の命がかかってるんだぞ?」

そう聞いた俺に、今度は子供らしい笑みを見せた。

「だって僕、生きたいから。死ぬなんて嫌だから」

何で笑うんだ。

どうしてそんな事言うんだ。

どうして…逃げないんだ……。

「お話はおしまい。いくよ?」

その言葉に体を強張らせると、すでに真下に凪が居た。

ネクロノミコンの背表紙で左顎を殴られる。

その影響で軽い脳震盪を起こし、足下がふらつく。

続けて膝の裏側から攻撃され、体勢を崩される。

上から…来る!

そう思った俺は小烏に手を添えて上に挙げる。

すると小烏と俺の両手に少し重めの負担がかかる。

凪が離れると同時に負担はなくなった。

まだ少しふらつくが、戦えないほどではない。

負けるわけには、いかないんだ。

そう自分に言い聞かせ、小烏を構える。

「凄いな、お兄ちゃん。お兄ちゃんになら、この本の力見せてあげてもいいかも」

「本の、力?」

あの本にどんな秘密があるっていうんだ…。

殴るだけの武器じゃないのか。

「我を守護する炎の鳥よ。我の前に姿を現し、我を護れ!」

目の前に火の玉のような炎が現れる。

「来い!フィート!!」

凪がそう叫ぶと、火の玉が徐々に形を成していく。

なんだよ…これ。

「こんなの、ありかよ…」

俺の目の前にあった火の玉は、いつの間にか火の鳥へと形を変えていた。

「紹介するよ。僕の本当の相棒
パートナー、フィートだよ」

翼を広げ、一度羽ばたくフィートという名の火の鳥。

「仲良くしてあげてね、お兄ちゃん」


にっこりと笑ってそう言う凪。

 

炎の羽が、俺の汗と共に地面に落ちた―――――。

 

 

 

 

 

 

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