第十八話

 

 

 

 

 

目の前には巨大な火の鳥。

その足下には少し俯いて笑う凪。

俺は…どうしたらいい?

「ボーっとしてたらフィートに燃やされちゃうよ?お兄ちゃん」

はっとして右に飛び込むと、さっきまで俺がいた場所に炎の柱が上る。

こんなの…どうやって戦えって言うんだ。

「フィート、あのお兄ちゃん燃やしちゃえ」

凪の言葉に、了解という意味を示すフィート。

じっとしていたらまずい。

そう思った俺は走り出す。

予想通り、俺のあとには数本の火柱が上る。

考えろ、考えるんだ。

周囲を見回してから、フィートと凪を見る。

凪の足下には何かの紋章があり、よく見るとフィートを召喚してから凪は動いていない。

もしかして…と、さっきまでと違い、目的地を定めて走り出す。

自分に向かって走ってくる俺を見て、凪が動揺する。

「フィート!」
すると、今まで後ろから追ってきていたフィートが、俺の頭を飛び越えて目の前に降りてきた。

やっぱりか…。

「……お前、フィートがいる間は動けないんだろ」

「………」

俺の質問に沈黙で返す凪。

沈黙は肯定、だな。

そうと分かれば簡単だ。

斜め前に踏み込み、走り出す。

フィートがそれに反応して動き出すが、すでに俺は凪の隣にいた。

小烏の柄に近い唯一の峰で凪を殴り飛ばす。

斬れなかった……斬りたくなかった。

こんな子供まで殺すなんて、俺は…。

凪が吹っ飛ぶと同時に足下にあった紋章は消えた。

これでフィートも消えたはずだと、上を見上げてみる。

フィートはまだそこにいた。

どういう事だ?

俺の予想では、あの紋章に凪がいる時だけフィートが現れるんだと思ったのに。

「う…」

小さく呻き声を上げながら体を起こす凪。

そんな凪に、フィートが向かっていく。

様子が違う…なんだか俺に向かってきていた時と同じような…。

…殺気?

まさか……。

気付いた時には凪に向かって走っていた。

凪を掴み小脇に抱え上げ、そのまま走る。

ついさっきまで凪がいた所に、火柱が上った。

フィートが…暴走を始めた―――――。


 

 

 

 

 

 

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