第二話

 

 


ここはとある街のゲームセンター。

結局、俺は柊平達に連れて来られてしまった。

男子高校生4人に手足を押さえられて、逃げられるわけがない。

……プロレスラーや相撲取りは除くが。

「何やってんだよ、和。お前の順番だぞ、早く来いって。」

自分の名が呼ばれ、ゆっくりと顔を上げる。

共用施設にあるビデオ鑑賞に使うような個室の一つから、柊平が顔を出し、手で『来い』という動作をしている。

子供が親を呼ぶような仕草だが、こちらとしては非常に恥ずかしい。

平静を装い、俺は柊平が入っている個室へ向かった。

俺はすでに、逃げる事を諦めていた。そして、付いて早々20分も待たされたような人気ゲームだ。

少し…ワクワクしていた。

個室の中は人が二人は入れるくらいのスペースがあり、薄暗かった。

光っているのは画面だけ。

俺は開いていた柊平の右隣に座った。

「新規の場合は、必要事項を登録して始めるんだ。登録って言っても、メールアドレスとキャラの選択、パスワードだけだけどな。簡単だろ?」

柊平の説明を聞きながら、俺は必要事項を入力していった。

パスワードは「158201」。

俺はローマ字をパスワードにするのが嫌いだ。

ついでに、数字は適当に思いついたもののため、同時に携帯電話のメモ帳にパスワードを保存しなければならない。

これがなかなか大変だったりする。しかし、俺はなんでもないように振舞いながら、どんどん進めていった。

「……これでいいか?」

全て入力し終わった俺は、念のために柊平に確認した。

返事はOKだった。

そして、右足、左足、腰、右手、左手、頭の順に、たくさんのコードが付いた機械を体に取り付けていった。

少し重いが、座ってやるから問題はないらしい。

「んじゃ、頑張って来いよ。」

機械を装着し終えた俺に、柊平が話しかけてきた。俺はその言葉に答えるかのように、右手の親指を立てて、こめかみ辺りのスイッチを押した……。

俺の周りは流星が流れているようだ。

体も軽い。

でも、なんとなく恐ろしく感じる。

そして、懐かしくも感じる。

なんと表現すればいいのだろうか。

懐かしく、とても温かいものが、俺を包み込んでいる。

ゲームの世界に入らないように、止めようとしている。

これから起こることから、俺を守ろうとしているのかもしれない。

その何かに、不思議と不安はなかった。

俺はコレを知っている。

この人を知っているのだ。

遠い昔の記憶に、この温かな感じがある。

あれは…確か……。

ダメだ、思い出せない。

とても…とても大切な思い出だった気がするのに。

たとえ何があっても、俺とあの人の絆は消えないっていう思い出だったはずなのに…。

あの人?

…あの人って…誰だ?

そんなことを考えている間に、俺はゲームの世界に入った――――。

 

 


 

 

 

 

 

 

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