第二十一話
静かな空間に響く渇いた携帯の音。
その音は、とても聞き覚えのある音。
ポケットに入れていた携帯を取り出し、開く。
待ち受け画面には、「新着メールあり 1件」と書いてある。
誰だろう、とそのメールを開く。
そこには……以前にも見た事のあるアドレスが書かれていた。「今日の宴はこれで終わり。でも、ゲームはまだまだ続く。自分以外は皆、敵。敵は殺せ。コロセ。そして、たくさんの血をこの星に捧げよ。 十人の管理者」…なんだよ、これ。
まだ、こんな事が続くのか?
こんな事、望んでいたわけじゃないのに…。
静かに携帯を閉じ、ポケットに入れる。
裏ゲームはまだ続く。
このゲームから逃れる方法はただ一つ。
自分が死ぬ事。
「………小烏。」
パンッ
右手の拳を左手の掌に垂直にぶつける。
ゲームが終了しても、武器は出てくるみたいだ。
先生や凪と戦った時のように、小烏は光を放ちながら出てきた。
そして、小烏を掴み取り、剣先を自分の心臓へ向ける。
「ごめん、先生…。」
聞こえるわけがないのに、呟く。
そして……思い切り小烏を自分の胸に突き刺す。
血が流れる。
倒れていく自分の身体。
視界には石ころの灰色だけ。
やっとこのゲームから…救われた。
俺の意識は、ここで途切れた。目を覚ますと、俺が死んだはずの河原だった。
死ななかったのか?
いや、死ねなかったのか。
ゲームが終わったからか、それとも、自分の武器では死ねないのか。
俺の身体に突き刺さっていたはずの小烏はいつの間にか消えていた。
そして、その傷跡も最初から無かったかのように消えていた。
「………ちくしょぉ。」
俺は、死ぬ事すら出来ないのか。
殺す事は出来るのに、死ぬ事も出来ないのか。
「お前は…生きろ。」
……先生。
俺、どうしたらいいんですか?
人を殺してでも生きろと、貴方は言うのですか?
俺に、そんな価値があるんですか…?
先生、教えてください先生!
「俺は……どうしたら……。」
ふと、ある日の先生の言葉が頭をよぎった。
「お前達は俺の大事な生徒だ。」
「どんなに醜くてもいい。情けなくてもいい。」
「石にしがみついてでも、生きる事だけを考えろ。」
「生きてればいつかきっと、お前達の幸せを見つけられるから。」
「だから、俺より先に死ぬんじゃねぇぞ!」
先生は…偽善者だ。
でも、俺は……。
そんな先生が、大好きだったんだ。
……先生。
俺、生きてみます。
醜くて、情けなくて、とても……酷いやつですけど。
俺は生きてみます。
凪、お前の分まで、必ず生きるから。
だから、二人とも……見守っててくれよな!俺は生きるために、戦う決意をした。
もう、迷わない!