第二十七話

 

 

胸部を血だらけにした沙羅さんを腕に抱く。


甘い雰囲気のかけらもない、この空気。


俺は叫んでいた。


叫び続けていた。


誰にも届くわけがないって分かっていたのに、叫び続けた。


さっきまで動いていたモノ。


動かなくなってしまったモノ。


そうしたのは俺自身。


でも、俺の意志じゃない。


俺じゃない、もう一人の俺。


あなたが望んでくれたら、俺は死ねたかもしれない。


あの時の言葉…。


『あんたなんか、死んじゃえばいいのよ!!!』


あの言葉に、俺は少し酔いしれた。


あぁ、死んでいいんだ。


そう思ったのに……。


『君みたいな、優しい子は…生きなくちゃ』


そう言われたら、困ってしまう。


楽になれると思ったのに。


楽になってもいいんだと、思ったのに…。


俺はまだ、死んではいけないのか。


楽になってはいけないのか。


どれだけの命を…背負えばいいんだ。


先生、凪、沙羅さん。


俺はもう、この三人だけでも十分だ。


立てなくなるくらい、三人の命は重すぎる。


俺みたいなやつになんか持ちきれるわけがない。


本当に本当に死ななければならなかったのは俺なのに。


なんで俺は、こうしてここにいる。


こうして、ここに立っている。


俺はどうして…生きている?


耐えきれない命の重さをこの身に受け止める。


受け止めきれなくて、俺は自分を責める。


そんな…そんな事の繰り返しじゃないか。


俺はどうしたらいい。


管理者を捜せばいいのか?


それとも、このゲームをこのままプレイして、止めてくれるようにみんなに呼びかけるのか?


……そんなの、無理に決まってる。


止められるような事なら、みんなとっくに止めているんだ。


なのに、止めない。


今もこうして、どこかで誰かが誰かに殺される。


今俺が、沙羅さんを殺したように。

 


俺のせいだ。

 

 


俺のセイだ。

 

 

 

 


オレのセイだ。

 

 

 

 

 


オレノセイダ。

 

 

 

 

 


………………………………あははっ、そっか……。

 

 

 

 


俺が全て悪いんだ。


俺が全部悪いんだ。


なんだ、そっか。


だから沙羅さんは言ったんだ。


俺にならみんなを止められるって。


そうだよな。


俺が原因なんだから…。


俺が全て、悪いんだから………。

 

 


あはは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……。

 

 

 

 

 

 

 

 


俺の心は、崩壊した―――――。

 

 

 

 

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