第二十八話

 

 

こんな馬鹿馬鹿しいゲームなんて終わらせなければならない。


これ以上、悲しい思いなんてしたくない。

 

 


だから…俺は………。


心を、捨てた。

 

 


人を殺しても手が震えなくなった。


涙も出なくなっていった。


狂ったように小烏を振るい、向かってくる者を斬っていく。


ある者は怯え、逃げまどう。


その背中を、容赦なく斬る。

 

 

 


ある者は馬鹿みたいに向かってくる。


隙だらけのソレを、迷うことなく斬る。


血が飛び散る。


小烏が血で濡れていくと同時に、俺の身体も濡れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「おい、名月 和。お前がナツキだな?」


「…そうだけど?」


「俺と勝負しやがれ!!」


「………あんたなんか、相手にならないよ。」


口元が歪む。


にやり、と笑ってそいつに向かう。


臆することなく向かってくるそいつ。


今までの敵より、少しはやれそうだ。


お互いが素早く、自分の武器を取り出す。


俺の小烏を、グローブを付けた手が止める。


「………あんた、名前は?」


陶木すえき 田嶌たじま。タジマだ」


「よく見てみれば、それ…ウチの制服じゃん」


「てめェより一つ、先輩だよ!!」

 


ガキッ

 


小烏を左手で止め、右手で俺を攻撃してくる。


無理矢理小烏を動かし、柄でそれを止める。


予想以上に重い攻撃だった。


刀身を立てて、そのまま陶木という人物に斬りかかろうとすると、後ろに避けられた。


「やるじゃん。」


「だてに喧嘩してねーんだよ。」


見目で予想は付いていた。


俺と同じ制服を思い切り着崩し、チャラチャラと付けられたアクセサリー。


ピアスは両耳で合計5つ。


地毛とは思えない、真っ赤な髪。


人を見た目で判断してはいけないと言うが、これは間違いなく不良と呼ばれる類だろう。


それなら喧嘩もし慣れていそうだ。

 

 


少し、本気を出すか……。


小烏を構える。


自分の周りの空気が冷えていくのが、何となく分かる。


殺気。


俺の周りは、それに満たされていく。


目の前の人物を殺す。


俺は自分に心でそう告げて、踏み込む。


後一歩で斬れる、そう思った時だった…。


「ぐあっ!!」


「!?」


陶木という人物が、突然その場に崩れ落ちる。


俺は何もしていない…ということは。


「あの野郎…。裏切りやがったな、山蛇やま だぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

陶木の背後から、クスクスという小さな笑い声が聞こえた―――――。

 

 

 

 

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