第四話

 


「無事(?)にCNも登録したことだし、はれて君もVFG参加者の仲間入りだ。ナツキ君。」


拍手とともに、背後から声が聞こえた。

…そういえばいたんだっけ、ムキムキ。


「ありがとよ。あんたのおかげだ…。この借りは、そのうち返すよ。」


俺はムキムキの方を肩越しに見ながら言った。

背中を向けながらも、隙は見せていない。

例え、こんな風にいろいろしてくれても、敵ということには変わりない。

…いや、わざと隙を見せてやられて、ゲームオーバーになった方が楽か…。

そう考えた俺は、ムキムキに体ごと向いた。

少しビックリした表情のムキムキが見えた。

それはそうだろう。

隙を見せていなかったやつが、突然無防備になったのだから…。


「で、あんたはなぜここにいる?」


ずっと疑問に思っていたことを、ムキムキにぶつけた。


「あんたってなぁ…。俺には『テン』っていうCNがちゃんとあるっつーの!ほら、俺の頭の上に、文字が浮いてるだろ?それがその人物のCNだ。よく覚えておけよ。」


ああ。

会ったときに見たやつがCNなのか。

気のせいじゃなかったのか……。


「わかった。今度から注意するよ。で、さっきの質問の答えは?」


「この辺には、俺と同じくらいのやつがうようよしてるから、相手探してたんだよ。そしたらナツキ君、君が通りかかったということだ。」


なるほど。

じゃあ戦う気満々ということか。

だったら……。


「じゃあさ、俺の相手してくれない?暇だったらでいいけど。どんな感じなのかよく分からないし。」


俺の提案に、とくに気にした様子もなくテンは言った。


「手合わせならいいぜ。初心者とマジバトルは、流石にできないからな…。手合わせっていうのは、普通のバトルと違ってお互いを倒さないのがルールだ。それでもいいか?」


「へぇ。じゃあ、それよろしく。」


俺がそう言うと、テンは突然自分の左手のひらに右拳をたたきつけた。

それと同時に、テンの目の前に三メートルくらいはある長い棍が現れた。

その棍には装飾がされていて、打撃に強い印象を受けた。


あれは確か、中国の兵士が使っていた堅い木を削って作る単純な武器だ。

テンはそれを軽々と振り回し、正面で止め、言った。


「これが俺の武器『木鉄長棍[ぼくてつちょうこん]』だ。普通の棍とはひと味違うぜ。じゃあ、さっきの俺の真似してお前も武器出せよ。」


俺は言われたとおりテンの真似をした。

すると、俺の目の前に刀が現れた。

この刀、少し前に図書館の本で見た。

平家に代々伝えられた名刀で、刀身の先端から半分くらい両刃になっていることが特徴。

源氏との最後の合戦の壇ノ浦で行方不明になったと言われる。

幻の刀『小烏[こがらす]』。


「これが、俺の武器……。」


小烏に見入っていると、目の前にいたテンが表情を変えて俺に言った。


「おい、お前。やっぱり手合わせはなしだ。お前を殺させてもらう。」


テンの様子、態度が急変した。

いきなり…俺を殺す?

どういう事だ?

わけが分からない…。

 

 

 


俺たちは、しばらくその場から全く動かないで、お互いを見続けていた――――。

 

 

 

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