目を開くと、薄暗い部屋にいた。
ゲームに入る前に入った小部屋だった。
目の前の画面には「See You Next!」と書いてあった。
…もう二度とやりたくはないな。
そんなことを考えながら小部屋を出た。
部屋を出ると柊平がベンチに座っていた。
無意識に足が向いた。
目の前に立つと、柊平は顔を上げた。
そしてつかれきった顔で俺に言った。
「遅いよ和。待ちくたびれた〜。」
「悪い。…他のやつらは?」
「みんななら外でジュース飲んでるよ。和のこと待ってる。」
「そうか…。」
俺の返答はそっけなかった。なんだろう、あんなことがあったからだろうか。
忘れたい、そう思った。
「あ、そうだ。ゲーム面白かった?」
「ん?…ああ、それなりに。でも俺は今回だけでいいや、疲れるし。」
適当な言い訳を言ってもう二度とこのゲームに誘われないようにしたかった。柊平達には悪いけど、あんな思いは二度としたくない。
あんな…人を殺すような思いは……。
「そっか…。和、強そうだから対戦を楽しみにしてたのになぁ。」
柊平のその言葉は、俺の耳には入っていなかった。俺の意識は別のところにいっていたのだ。
あの感触、あの臭い、あの温かさ。
一生忘れることができない。
忘れてしまいたい…できるなら……。
「……と。…まと。やまと!」
自分の名前に、ようやく俺は反応した。気づけば、店の外にいた。
道の向こうでは仲間達が手を振っている。
その一番前に柊平もいた。
行かなきゃ…そう感じた。
そのとき、携帯が震えた。
少しの間振動して、すぐにやんだ。
メールだ。
「だれだろう。母さんかな?」
携帯を開き、メール画面に変える。受信メールの未読欄を開き、読み始める。
気づけば二つ入っていた。
まずは一つ目。
母さんからだった。
「今日はいつもどおり帰ってこなかったのでびっくりしましたが、柊平君たちが家に電話してくれましたよ。きちんとお礼を言っておきなさいね。帰る時は気をつけて帰ってきてください。 母より」
あぁ、やっぱり。
そう思った。
そして二つ目。
「はじめまして。われわれはV・F・Gを管理する十人の管理者です。このたび、あなたは35位になり、裏ゲームの参加者と認められました。なお、このゲームのリタイヤは『死』を意味します。ご自分の命を懸けて、戦ってください。開催は後日からです。健闘を祈ります。 十人の管理者」
「なんだ、これ。裏ゲーム?」
…まぁいいか。きっと何かの間違いだろう。でも…何か気になるな。
「和ー!早く来いって!」
「あっ、わりぃ!」
俺はみんなのところに走った。
これから起こることなど、まったく思いつきもしなかった。
俺にとって大切なものを、失っていくことを―――。