第八話

 


目を開くと、薄暗い部屋にいた。

ゲームに入る前に入った小部屋だった。

目の前の画面には「See You Next!」と書いてあった。

…もう二度とやりたくはないな。

そんなことを考えながら小部屋を出た。


 

部屋を出ると柊平がベンチに座っていた。

無意識に足が向いた。

目の前に立つと、柊平は顔を上げた。

そしてつかれきった顔で俺に言った。


「遅いよ和。待ちくたびれた〜。」


「悪い。…他のやつらは?」


「みんななら外でジュース飲んでるよ。和のこと待ってる。」


「そうか…。」


俺の返答はそっけなかった。

なんだろう、あんなことがあったからだろうか。

忘れたい、そう思った。


「あ、そうだ。ゲーム面白かった?」


「ん?…ああ、それなりに。でも俺は今回だけでいいや、疲れるし。」


適当な言い訳を言ってもう二度とこのゲームに誘われないようにしたかった。

柊平達には悪いけど、あんな思いは二度としたくない。

あんな…人を殺すような思いは……。


「そっか…。和、強そうだから対戦を楽しみにしてたのになぁ。」


柊平のその言葉は、俺の耳には入っていなかった。

俺の意識は別のところにいっていたのだ。

あの感触、あの臭い、あの温かさ。

一生忘れることができない。

忘れてしまいたい…できるなら……。


「……と。…まと。やまと!」


自分の名前に、ようやく俺は反応した。

気づけば、店の外にいた。

道の向こうでは仲間達が手を振っている。

その一番前に柊平もいた。

行かなきゃ…そう感じた。

そのとき、携帯が震えた。

少しの間振動して、すぐにやんだ。

メールだ。


「だれだろう。母さんかな?」


携帯を開き、メール画面に変える。

受信メールの未読欄を開き、読み始める。

気づけば二つ入っていた。

まずは一つ目。

母さんからだった。

 


「今日はいつもどおり帰ってこなかったのでびっくりしましたが、柊平君たちが家に電話してくれましたよ。きちんとお礼を言ってお
きなさいね。帰る時は気をつけて帰ってきてください。 母より」

 

あぁ、やっぱり。

そう思った。

そして二つ目。

 


「はじめまして。われわれはV・F・Gを管理する十人の管理者です。このたび、あなたは35位になり、裏ゲームの参加者と認められました。なお、このゲームのリタイヤは『死』を意味します。ご自分の命を懸けて、戦ってください。開催は後日からです。健闘を
祈ります。               十人の管理者」

 

「なんだ、これ。裏ゲーム?」

…まぁいいか。きっと何かの間違いだろう。でも…何か気になるな。

「和ー!早く来いって!」


「あっ、わりぃ!」


俺はみんなのところに走った。

 

 

これから起こることなど、まったく思いつきもしなかった。

俺にとって大切なものを、失っていくことを―――。

 

 

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